先日の携帯端末向けFlashPlayer開発終了の発表を受けて、Adobeの関係者や著名なFlash開発者の方々がtwitterやブログなどで意見を表明しています。その中で、かつてAdobeでAndroid向けFlashPlayerの開発に携わり、現在はFirefoxの開発を行なっているJethro Villegas氏の下記の記事が個人的に非常に印象に印象に残りました。
Did Adobe finally kill Macromedia Flash? | junglecode.net
かつて共に働いたメンバーに対する仕打ちを憂いた側面もあることから、タイトルもセンセーショナルで内容も些か感傷的・感情的な印象もあります。ただ、SWFにJPEGと同じようなユビキティを望んでいたことや、SWFのオープンソース化への希望など、個人的に共感できる部分も多くありました。自身の理解を深めることに加え、同じように感じるかたもいらっしゃるかなと思ったので、全文翻訳してみました。
AdobeはついにMacromedia Flashを殺してしまったのか?
Adobeがモバイル端末向けFlashPlayerの開発終了を発表した。知っているかもしれないが、僕は2010年6月にモバイル端末向けのFlashPlayer10.1が出た時のエンジニアリングチームに所属していた。今回の発表は色々な意味で残念ではあったが、モバイル向けWEB開発の現実を考えれば決して驚くべきことではなかった。
僕がAdobeにいた頃、僕らはAndroid OSを搭載したHTC Nexus Oneで十分速く動作するFlashPlayerの開発に膨大な時間とエネルギーを費やしていた。同じ頃Appleは、僕らがまずAndroidでの動作を第一に考える限り、モバイル版のSafariへのFlashの搭載はありえないだろうということを明言していた。僕らが製品を世に出す前からそのことが出回ってしまったことで、僕らが何をしようが、どれだけ優れたことをしようが、僕らの開発したユビキタスなプラットフォームがモバイルの世界で展開することはなくなってしまった。
もちろん、これが話の全てというわけじゃない。僕が本当に失望したのは、AdobeがFlashプラットフォームのビジネスを終わらせようとしてるということだ。彼らは昨日、750人の従業員のリストラを行った。その中には、現役のFlashオーサリングツールの開発チームも含まれている。これはつまり、ツールの販売で得た収益によって無料のFlashPlayerランタイムを提供するというビジネスに、もはやAdobeは関心を持ってないということだ。僕は常々、SWFというデータ形式がJPEGと同じようなユビキティを確保されるようにと思って取り組んでいた。1998年に制作したSWFは、2028年においても一般的に入手可能なランタイムで再生されるものと信頼できる。そのようなことの実現には、永続的に技術の発展を導きまたそれに奉仕するような組織が必要だ。
残念なことに、Adobeはその組織ではなかった。
いやまだわからない。僕が望んでいるのは、Adobeがランタイムコードをパブリックドメインとして公開し、第三者がそれを拡張し維持していけるようになることだ。コードの中にサードパーティーのライセンスが含まれていることはよく承知してるが、その点は簡単に改訂できるはずだ。Flashに生き残りの道が残されているとしたら、それはオープンソースとなって、来る時代にユビキタスなリッチメディアのデータタイプとしての展望を切り開いていくより他にはない。Adobeは認めなければならない。社会はSWFの存続を求めていて、プラットフォームを開放することがその帰結のための唯一の道だということを。
なお、補足ですが、この記事が論議を醸したため、Jethro氏は後日の記事「Flash: I’m not dead yet!(Flash『僕はまだ死んでないよ!』)」の中で、上記の記事を投稿した経緯について、
AdobeがFlash Proという製品を店頭から回収しようとしている(=ラインナップから無くそうとしている)などとほのめかしたつもりはなかった
と前置きした上で、
かつてDirectorの開発を海外にシフトし、チームメンバーがFlashの開発に移った時のように:
- 開発の舞台をインドや中国などの低コストな地域に移すことで携帯端末向けFlashPlayerの発展や維持は継続する
- コストのかかる本国(US)の技術者達については、高成長な他のプロジェクトに配置換えする
というパターンを選択せず、携帯端末向けFlashPlayerの開発を即座に終了して関係している技術者達をリストラしてしまったことが動機になった
・・・ということを述べています。